企画総務委員会 視察研修所感
視察先:山口県周南市
日時:令和元年10月9日㈬午前10時15分~
担当:施設マネジメント課
場所:周南市役所5階にて
氏名:城内 志津
1、 テーマ
公共施設の再配置の取り組みについて
2、 目的
全国の地方自治体は、少子高齢化社会により、生産年齢人口の減少、高齢化による社会保障費増大による財源確保の課題を抱えている。そのような中で、公共施設の老朽化で改修や更新の費用増大により財政状況がひっ迫することや、公共施設へのニーズのあり方が変化することが想定されており、公共施設の再配置や維持管理費の節約について、検討や対応を求められている。
刈谷市においては、微少ながらも人口は増加しているが、将来的には全国と同様の課題を抱えており、山口県周南市の先進的事例に学ぶこととする。
3、視察内容
◎周南市と刈谷市の比較(周南市政策推進部施設マネジメント課作成表より)
人口
(A)
|
面積
(B)
|
人口密度
(A÷B)
|
公共施設数
|
施設総面積
(C)
|
一人当たりの
床面積(C)÷(A)
| |
刈谷市
|
152,617人
|
50.59㎢
|
3016.7人/㎢
|
804棟
|
549,927㎢
|
約3.6㎡
|
周南市
|
142,692人
|
656.29㎢
|
217.4人/㎢
|
1,114棟
|
849,016㎢
|
約5.9㎡
|
当初予算規模(H31一般会計)
(D)
|
市税額と割合(H31一般会計)
|
1人当たりの予算規模
(D)÷(A)
| |
刈谷市
|
約581億円
|
約361億93百万円(62.3%)
|
約38万1千円
|
周南市
|
約631億08百万円
|
約259億63百万円(41.1%)
|
約44万2千円
|
◎周南市の現況
平成15年4月に2市2町が合併し、「周南市」が誕生。
そのため1,000を超える公共施設を抱え、その約6割が整備後30年以上経過しており、一斉に更新時期を迎えている。
・全ての施設の更新費用の試算→今後40年間で約5,886億円
・不足となる見込み金額→1,766億円(約30%)
※すべての施設を現状のまま更新は困難!
≪周南市のこれまでの取り組みの流れ≫
平成18年度9月より公共施設の見直しに取り組み始める。
平成24年10月に「(仮称)周南市公共施設再配置計画(案)」が公表されたが、市民や議会での説明不足、総論を浸透させる前に各論へ言及してしまったこと、地域性への配慮不足から、住民や議会の反発を受け、市民の理解が得られる計画、マネジメントに向けての見直しが行われ、平成25年11月県内初となる「周南市公共施設白書」を作成し、平成27年8月「周南市公共施設再配置計画」策定し、平成28年4月には、それまでの担当部署であった行政改革推進室から「施設マネジメント課」が設置に至る。
≪公共施設再配置計画の内容について≫
・計画の基本方針
サービス(市民ニーズ)・コスト(効果的効率的)・量(持続可能)・性能(安全安心)の最適化
・アクションプラン
① 施設分類別計画(各施設分野ごとの取り扱いや方向性、優先度を示す)
② 地域別計画(地域別の施設の再配置を示し、住民参加型での実施)
③ 長期修繕計画(ハコモノの寿命を延ばすための計画)
④ 長寿命化計画(インフラ施設の寿命を延ばすための計画)
≪計画の周知(マンガの活用)≫
「周南市公共施設白書」「周南市公共施設再配置計画」「公共施設再配置の取り組み」について、市民に分かりやすく伝えるために、マンガを制作し計画の周知に活用。
◆マンガの活用効果
・分かりやすい・若い人が受け入れやすい・手に取ってもらいやすい・話題性がある(子どもと共有しやすい)・長期間活用できる・マンガの登場人物を他の場面でも活用できる
≪再配置計画策定後の取り組み≫
◆アクションプラン②のモデル事業として、「長穂地域」「和田地域」で老朽化している支所、公民館について、住民参加型(ワークショップ形式、協議会形式などで計画の策定を実施)で進め、「地域別計画」として策定し、再配置を実現化していく。
その過程を市民全体と情報共有する
◆公共施設の状態を管理者自らが点検・経過観察などを行うことで、状態の把握で、早期修繕やその優先度の順位付けにつなげる。
◆保育園の民営化や廃止した幼稚園を不登校児童生徒の通所施設への転用、教職員住宅を「就農パッケージ支援事業」として新規就農者の居住用へ貸付など、廃止や転用を実施。
◆平成27年7月の再配置計画策定時~平成31年4月時点までの削減量
・全体53施設減
・延床面積29,902.75㎡減
・一人当たりの床面積0.02㎡減で約5.7㎡
※全国の一人当たりの床面積は3.4㎡であり再配置の取組後も減ることはない。その原因は周南市は合併により32地域が広範囲にわたって点在しているため、それをカバーしようとすると、減らすことは難しいのではとの見解。
≪公共施設再配置の課題≫
・総論(現状、今後の予測、基本的な考えなど)の周知徹底
・情報(施設別データ、固定資産台帳データなど)の融合、集約化
・廃止した施設の有効活用(転用、売却、貸出、PPP手法、情報発信手法)
・地域別計画策定の準備等の負担やモデル事業以外の30地域への展開
◎マンガの活用…一般的に市の計画や事業内容は、専門用語や固い言葉やデータが連なり、膨大な内容量であることから、市民にとっては読む気にもなれないし、読んでも理解しにくいものとなっているため、その内容をマンガで伝えることで、どの世代にも読みやすく、理解しやすい内容、手法で、市民との情報共有や相互理解につなげようとしたことはすばらしいアイデアであり、また、マンガの制作を地元の専門学校に協力を要請したことは、市民を巻き込む事業となり、若者起用は若者支援やまちづくりの新しい担い手の発掘や、郷土愛の推進につながり得る施策である。
◎市民参画…最初の再配備の計画で、住民の反対の声が出た時に、市は、その声を無視せず、原因を検証し、計画の再考、情報共有、住民参画を手法導入の見直しに取り組んだことは、市民が自分事として地域の問題に取り組む意識を活性化させ、市民参加の市政のあり方として高く評価できる。
◎データ重視と情報共有…周南市の今後の課題にも挙がっているが、再配置の優先度を計るためには、市民の理解を得るためには、施設別データが必要不可欠であり、地域別計画策定の際にも市と住民との協議の歩み寄りのために活用しているとのことだが、刈谷市もこういったデータの活用を広く市民向けに、分かりやすい手法を持って、市民との情報共有に努める姿勢を学びたい。
◎転用事例…新規就農者の居住用へ貸付は参考にしたい。転用対象になる公共施設がない場合は、空き家を新規就農者への居住用として改築支援等実施して、農業従事者の継承者不足の課題解決に繋げられないだろうか。
◎住民参画事業…せっかく住民参画で実施したモデル事業において、住民の反応やその効果を知りたく質疑したが、計画に参加した住民からの様子や声、効果が分かるような回答やデータ関連のご回答は得られなかったため、アンケートなどを実施して住民の感想や参画する前後の気持ちの変化や推移などの、住民の声を丁寧に聞き集約しておくことは、次の住民参加型の事業の質の向上に必要であると感じた。
◎刈谷市公共施設等総合管理計画について…
◆今後40年間の更新費用推計は年度平均98億円。
平成29年度~平成38年度までの10年間では年度平均は約88億円が必要。
※平成22年度~平成26年度の投資実績額の平均を下回っているが、扶助費の増加等により楽観視できない
①平成24年度より公共施設維持保全基金積立事業の実施
②維持管理費の縮減のための施策を実施
◆令和30年代後半以降、公共施設等の改修や更新等にかかる費用が増大
→維持管理費の縮減に努めることが必要で具体的に調査していきたい
◆刈谷市の一人当たりの延べ床面積は3.6㎡
①人口規模が本市と同程度かつ市町村合併実施していない全国18市との比較で最も高い
(文化施設、公営住宅、運動施設、公園の占める割合が高い傾向)
②碧海5市との比較で最も高い
→新たな公共施設建設には、将来にツケを回さないことが絶対条件であり、そのためには施設の必要性や維持コストの丁寧な検討が必要不可欠
そのためのデータの収集に努めること
市民との情報提供の手法と共有に努めること
市民参加型で市民のニーズが反映された施設にすること
駅に隣接した周南市立図書館 |
開放的な市役所 |